フランスの長期滞在ビザ・滞在許可証の取得について
フランスに3か月以上滞在する場合、長期滞在ビザまたは滞在許可証を所持している必要があります。(ちなみに日本人がフランスに3ヶ月以内の滞在をする場合には、ビザは必要ありません)
そのため、フランスに長期滞在する場合、日本出国前に在日フランス大使館などのフランス側在外公館にて、長期滞在ビザを取得しなければなりません。
残念ながら、公的な説明はわかりやすいとは言えず、不足している情報もある上、手続き用のサイトがうまく機能していなかったり、メールや電話をかけても応答がなかったり、説明と実際に必要なものが違う(!)場合もあるため、なかなかスムーズに進まないこの手続き…多くの方が苦労されています。
今回は、筆者の実体験をもとに、滞在許可証の取得手順や注意点をご紹介します。(2023年4月現在のもの)
そもそも長期滞在ビザ、滞在許可証とは?
長期滞在ビザ:Visa de long séjour
- 外国人のフランス入国および3ヶ月以内の滞在のみを許可する、パスポートに貼られるシール式の証明書。滞在期間中にフランスで労働する場合には、労働許可証または滞在許可証が必要になります。
- 長期滞在ビザの有効期間は3か月~1年ですが、期間延長を希望する場合は、フランス県庁にて滞在許可証の申請が必要となります。
滞在許可証:正式名Titre de séjour, 通称Carte de séjour
- フランスでの合法的な就労および滞在を許可するもの。
- フランス当局が発行するカード型の証明書で、外国人の身分証明書としてもっとも一般的なものです。
- 初めて発行される滞在許可証の有効期限は、多くの場合1年。(駐在のような期限付きの仕事や学業など予め年数が決まっているものは1年以上のものもあります)
以降、更新手続き(有効期限2ヶ月前から可能)をすることになりますが、2回目以降に発行される滞在許可証の有効期限は、県庁やその他条件によって異なります。(特に語学学生の場合は、更新しても、半年や数か月しか延長できないこともあるので注意)
- その後は滞在許可証の更新を繰り返すことになりますが、6年目の更新手続きの時には、有効期限が10年の許可証を申請することができるようになります。
通称10年ビザと呼ばれるもので、永住権のないフランスでは、これが外国籍の人には最長の滞在許可証となります(※国籍をフランスにすれば永住は可能になります)。10年ビザの更新は、その後も10年ごとになります。
取得に際する注意点
未成年者の場合
未成年者(フランスでは18才未満)は、原則として滞在許可証を取得することはできません。
ただし、フランスを出国し、他の国(日本など)に旅行をする際には、DOCUMENT DE CIRCULATION POUR ETRANGER MINEUR (DCEM)という身分証明書を取得することができます。 DCEM は、フランス出入国時や乗り継ぎ地で提示を求められることがありますので、出入国審査を円滑に通過するためにも、出発する前に取得しておいた方が良いです。
なお、この身分証明書は、両親の滞在許可証取得後に申請が可能となります。
申請・手続き方法はしばしば変更になります!
手続き方法はしばしば変更になるため、事前に居住する地域を管轄するフランスの県庁(PREFECTURE)または支庁(SOUS-PREFECTURE)に直接問い合わせて確認を行う必要があります。フランス行政機関HP (Service-Public.fr) からご確認ください。
ワーキングホリデービザの場合
1年したら帰国する制約があるビザなので滞在許可証の申請は不要です。
申請手続きの流れ
1) 長期滞在ビザの申請書類を作成
- France Visa のサイトで長期滞在ビザの申請書を作成します
- フランスの滞在許可証は、取得する長期滞在ビザを元に、後日フランスで申請します
- 長期ビザ申請はフランス入国日の3カ月前から可能です。短期ビザ(シェンゲンビザ)の申請はフランス入国日の6カ月前から可能です。
- 申請書類を作成する際の重要情報はこちら(必読です!!)
- 日本の戸籍謄本等は、法廷翻訳の手配が必要になります。Atenaoでは、確実な法廷翻訳を、短い日数でご提供可能です。お見積もりはこちらから。
- ビザの申請中、パスポート原本はフランス大使館等のフランス側在外公館に預けることになるので、この間の海外渡航はできません
2) 住んでいる国のフランス側在外公館(在日フランス大使館など)に、HPから予約を取る
- 在日フランス大使館から申請する場合はこちらから。
- 特に休暇シーズン前は大変混雑しているので、余裕を持って申請した方が良いです(少なくとも出国予定日の1カ月前まで)。
- 予約のキャンセルや変更は、予約した際にメールで送られてくる予約票のリンクから行います。
- なぜかフランス語のサイトより、英語のサイトからアクセスした方が、予約が取りやすい場合もあるので、必要に応じて試してみてください。
- メールで送られてくる予約票は、大使館入館の際に提示が必要なので、印刷しておくこと。
3) フランス側在外公館(在日フランス大使館など)を訪れる
- メールで送られ来た予約票(印刷したもの)とパスポートを提示、荷物検査を受けて、いざ大使館に入館
- その場で申請書類の確認、顔写真の撮影、指紋の採取などが行われます。
- この際に撮られる写真が、長期ビザの顔写真になるため、あらかじめ身だしなみを整えておくことをお勧めします。(申請書の顔写真は使われませんでした)
- 万が一書類が不足していた場合でも、担当者に提示されたメールアドレスにデータを送ればOKな場合もあるので、重要な書類は随時pdf等で保存しておくことをお勧めします
- ビザの代金、99€(フランスへ留学する学生で審査を通った方は50€。支払い額は、その時のレートで換算された日本円での価格を提示されます)をその場で支払います。
4) シール式のビザが貼られたパスポート原本が、郵送で返却されます
- 大使館に直接取りに行くケースもあるようですが、ゆうパックで返送されるパターンが一般的なようです。
- このビザを持って、フランスにいざ渡航!
5) フランスに到着したら、なるべくすぐに滞在許可を申請
- 入国から3ヶ月以内に、フランスの滞在先の県庁もしくは支庁で申請します。
- 申請先はこちら:
- パリ パリ警視庁 (PREFECTURE DE POLICE)
- パリ以外の場合は、各県の県庁・支庁(以下のウェブサイトで検索)
SERVICE-PUBLIC: https://lannuaire.service-public.fr/navigation/prefecture
- 3ヶ月以内に登録をしないと、ビザを保持していても不法滞在扱いとなってしまうので、ご注意ください!
- 申請には長期滞在ビザを含め、滞在先を証明する書類などが必要となります。
- 滞在許可証受領時に必要な書類の説明が口頭でありますので、メモをしてください。
- 窓口に書類を預けると、récépissé(レセピセ)と呼ばれる受領証が発行されます。申請期間中、こちらが仮の滞在許可証となり、レセピセに記載ががあれば、フランスで労働を開始することもできます。
- 滞在許可証の申請方法は、県庁・支庁(役所)窓口での直接申請、郵送、オンライン登録等、申請先によって異なります。
6) 滞在許可証の発行、受け取り
- 許可証が出来上がったら、SMSとメール(自治体によってはSMSのみ)で連絡が来ます。
- 役所に予約を取って、受け取りに行きます。この際、レセピセ、指定された額の収入印紙(筆者の場合は申請時にではなく、受取時に支払うことになりました)、パスポート等が必要になります。
- 過去には、コロナ感染対策のため、郵送で受け取る期間もあったようです。
- 金額は申請する滞在許可証の種類によって違いますが、送られてくるSMSやメールに金額が書かれています。筆者の場合はvie privée et familialeの項目で、€225でした。(注意!別の説明用紙には250€と書かれていましたが、実際には225€だったので、申請の際によく確認することをお勧めします)
- 受け取ったらすぐに、裏表両面のコピーや写真を撮って、保存しておくことをお勧めします。
滞在許可証を取得した後は、OFII(Office Français de l’Immigration et de l’Intégrationの略で、フランスの移民局のこと)からメールが届き、指定された日時に最寄りのOFIIで面談、テスト、研修、認定テストを受けることが義務付けられています。
この面談、テスト、研修の様子についてはまた別途ブログでご紹介します。
その他お役立ち情報
滞在許可証盗難、紛失の場合の再発行オンライン手続き
- 滞在許可証を入れた財布をすられてしまった、紛失してしまった等の場合、再発行(DUPLICATA)の手続きは面倒でかつ時間、手数料がかかるので、滞在許可証のオリジナルを携帯するのはやめ、コピーだけを持っているぐらいの用心が必要です。
- 滞在許可証の盗難にあった場合の再発行手続きがやや簡単になったようで、下記のページからオンラインで始められます。電話での問い合わせ先『3430』は、なかなかつながりません。https://contacts-demarches.interieur.gouv.fr/etrangers/demande-de-duplicata/
(これは、滞在許可証盗難紛失専用ページですので、滞在許可証更新の予約がここで取れるわけではありません。まず、盗られた場所に近い警察署に赴き、récépissé de déclaration(届出の受取り書)と、身分証明書の盗難のみを扱った書類を受け取ります。
その後、それらをHPにアップロードして、申請を行うことになります。2ヶ月ほど(現在の状況)して、呼び出し状が返信されてきます。)
更新忘れに注意
- 有効期限が5年、10年と長くなるとありがちなのが、滞在許可証の更新忘れ。一度切れてしまうと、失効カードの復活は許可されず、一時帰国して在日フランス大使館で長期滞在ビザをとり直すところから再度スタートしなければならないケースもあります。くれぐれもお気をつけください。
- 更新手続きは、有効期限が切れる2ヶ月前から可能ですが、役所から更新の通知等は一切来ないので、自分でタイミングを把握して、手続きを開始してください。
役所での待ち時間
在日フランス大使館では、時間通りに行ったところ殆ど待たされませんでしたが、フランスのお役所での待ち時間は、予約時間通りに行っても平均2時間、最長で6時間だった場合もあったため、暇つぶしの本などを持参されることをお勧めします。
また、役所では、トイレが汚れている上に、手洗い用の石鹸や消毒液がない場合もあるので、筆記用具の黒いボールペン(青は不可とされるので注意)は、できるだけ持参された方が良いでしょう。なお、待合室の空調が効いていない場合もあるので、季節によって、カイロや冷たい飲み物等の持参もお勧めします。
フランスでの鉄則は「座して待たず、直接に動け」
フランスのお役所といえば、「たらい回しにされる、なかなか連絡がつかない、連絡が来ない」のが特徴です。
滞在許可証の切り替えや更新の際などは、新しい許可証が出来上がったらSMSやメールで通知が来るはずなのですが、待てど暮らせど、送られてこないケースが散見されます。
役所に電話をしても、問い合わせのメールを送っても対応してもらえない場合、ダメ元で、予約なしで窓口に行って直談判すると、案外すんなり手続きが完了するケースもあります。(本来は予約が必要なのですが、入り口には予約なしの来館者の列があります。ただし待ち時間は長め)
強引に押しかけて、直談判にて解決。フランスあるある事情なので、ご参考までに。
参考:
在フランス日本大使館HP:https://www.fr.emb-japan.go.jp/itpr_ja/taizaikyokasho.html
在日フランス大使館HP: https://jp.ambafrance.org/article15891
在仏日本人会HP https://zaifutsunihonjinkai.fr/
フランス/パリ滞在質問箱 http://okamotohirotugu.blog130.fc2.com/
※長期滞在ビザ、滞在許可証の取得手続きの方法はしばしば変更になるため、必ず、事前に居住する地域を管轄するフランスの県庁(PREFECTURE)または支庁(SOUS-PREFECTURE)に直接問い合わせて確認を行ってください。ご自身の管轄エリアは、フランス行政機関HP (Service-Public.fr) からご確認ください。
鈴木美波