共和国統合契約(CIR)- OFIIでのテストと面談

フランスに長期滞在する際に必要となる、滞在許可証。(滞在許可証についての詳細、取得手順は前回ブログ参照)

滞在許可証を無事受け取った後には、共和国統合契約(Contrat d’intégration républicaine 略称CIR)をフランス政府と交わすため、指定された日時に、最寄りのOFII(Office Français de l’Immigration et de l’Intégration – フランスの移民局)で “la visite d’accueil ” と呼ばれるテストと面談を受け、契約書に署名することが求められます。

 

今回は前回に引き続き、筆者の実体験をもとに、このテストと面談の様子をご紹介します。

共和国統合契約とは?

フランスに長期滞在する外国人は、フランス政府と「共和国統合契約」を交わすことが義務付けられています。フランス語でContrat d’intégration républicaineと呼ばれるもので、CIRと略称で記載されている場合もあります。

CIRは基本1年の契約で、次の事項へ同意を求める内容です:

  • フランス共和国の価値観を理解および尊重し、社会規範を守ること
  • フランスで生活する上で必要と判断される研修(市民研修、必要に応じて語学研修)を受けること
  • その他OFIIから指示された事柄(就職活動など)があれば、それを実行すること
  • 研修終了時の面談を受けること
  • 滞在にまつわる状況に変化があった際には、すぐに連絡をすること

CIRの契約書に署名し、OFIIから指示された研修等を受けた人のみが、次回の滞在許可の更新時に、複数年有効な許可証を取得することができます。

OFIIでのテストと面談の流れ

1 ) 招へいメールが届く

滞在許可証を取得してからしばらくすると、OFIIから呼び出しのメールが届きます。

内容は、フランス政府とCIRの契約を交わすにあたり、指定された最寄りのOFII事務所で、半日ほどかけて、フランス語のレベルチェックテストと面談を行うというもの。

必要に応じて日付を変更することはできますが、このテストと面談への出席自体は、義務付けられています。

持ち物は次の通り:

  • 招へいメールを印刷したもの
  • パスポートあるいは滞在許可証(申請中の場合はレセピセ)
  • 該当する場合はフランスの教育機関で教育を受けた証明書
  • (持ち物リストに記載はありませんでしたが)CECRLのA1級以上の資格、DELFのA1級以上の資格等を持っている場合は、その証明書のコピー。

 2) いざOFII

当日朝、私は少し早めに到着しましたが、入り口前にはすでに人だかりが。エントランスに、「新型コロナ感染症予防のため、マスクの着用は必須」と書かれたポスターが貼られていたので、急いで近くの薬局に買いに走りましたが、結局は職員も含め、誰も着用している人はいませんでした。

時間がくると、受付で手指消毒を行ったのち、滞在証明書と名簿と照らし合わされ、荷物チェックを経て、建物の中へ。

3) フランス語のレベルチェックテスト

このテストは、受験者のフランス語のレベルが、CECRL(注釈1)の入門レベル、A1級(注釈2)に到達しているかをチェックする内容です。

フランス語のディプロマ(CECRL やDELF/DALF等)を持っている場合は、このテストをスキップできるそうなので、A1級以上の資格を持っている人は、証明書のコピーを持参してください。(私は試験当日に、会場で説明されました)

筆記テストを受けることが難しい初級レベルの人は、テストが始まる前に別室に案内され、語学研修の案内を受けていました。

私の場合は当日、合計17名が1つの教室のような部屋に案内され、次のテストを受けました。

  • 筆記テスト(20分)
    – 企業広告の文章を読んで、内容に関する質問に答える(長文読解)
    – SMSのやり取り画面の空欄の吹き出しに、適切なセリフを記入する(カジュアルなフランス語の理解能力もチェックされる様子)
    – 役所の記入用紙に、自分の基本情報を正確に記入する
    – 電力会社から届いた高額な請求書に対して、内容確認の手紙をまとめる(ライティング能力以外にも、手紙の中で、請求書番号を記載して状況を説明しているかという点についてもチェックされました)
  • ヒアリング・スピーキングのテスト(個別の面接)
    – 自己紹介
    – フランスに長期滞在するに至った経緯の説明
    – フランス語習得の経緯の説明
    – レベルチェックテストの結果発表
    – 今後DELF/DALFの無料語学研修および資格試験の受験を希望するかの確認

余談ですが、筆記テストの会場の様子が印象的だったので、ご紹介します。

まずテスト開始前に、監督官から、開始の合図があるまで答案用紙を開かないこと、試験中は携帯電話の電源は切ってカバンの中にしまっておくこと、受験者同士で話をすることは禁止であること、カンニングが発覚したら失格になること等の基本事項の説明があるのですが、開始前からルールを守らない受験者が続出。試験中には、携帯電話が鳴ったり、「うーん…難しい!わからない!」等の独り言を繰り返す人や、「問3の答えは、何て書いた?」と、隣の受験者に堂々と尋ねる人、「この後お昼ごはんは提供されるのか」と試験官に尋ねる人などで、試験会場は常時にぎやか。試験監督が何度注意しても収まらず、静かに試験を受けている人は、少数派でした。

日本で暮らしていた際には考えたこともなかったのですが、ルールを守るという文化や習慣が希薄な人、あるいは無いという人も、世界にはたくさんいるのだろうなと思いました。

ちなみに、ルール違反とみなされそうな行為をしていた受験生たちは、試験監督に注意されてはいましたが、失格にはなっていないようでした。

4) 個別面談

先ほどのヒアリング・スピーキングの面接官とは別のOFII職員と、個別に面談を受けます。

一人ずつじっくり面談をおこなうためか、1時間半ほど待ったのち、このようなことを聞かれました。

  • 家族構成(結婚、PACSしているかなど)
  • 仕事について(今仕事をしているか、就職に関する情報など)
  • フランスでの生活ニーズの聞き取りおよび、必要に応じて行政サービスの紹介(学校、病院、社会保障など)
  • 運転免許についての説明。日本の運転免許証を持っている場合、1年以内に必要書類を用意し、ANTS(注釈3)のサイトから手続きを行ってフランスの免許に交換しないと、フランスで免許を新規取得しなければならなくなるので、注意するようにとのこと。この書類の中には、日本大使館や領事館に作成を依頼したり、法廷翻訳が必要な書類も含まれます(注釈4)。Atenaoでは、確実な法廷翻訳を、短い日数でご提供可能です。お見積もりはこちらから。
  • 日本の資格で、フランスの資格に適合できるものがあれば、それが確認できるサイトを教えてくれます
  • 先ほどのフランス語のレベルチェックテストの結果、語学研修が免除された人は、免除の照明書(attestation)を受け取ります。免除されなかった人は、語学研修の予定組みへ。
  • フランスの社会、文化や歴史について勉強する市民研修(formation civique)の予約。研修4日分(合計24時間)の予約を取ってもらいます。予約が混み合っているらしく、私の場合は3ヶ月先になりました。
  • CIRの内容説明および、契約書への署名。
  • CIR契約書(本人保管分)と、研修の予約票と、語学研修免除の証明書を入れた、OFIIのロゴ入りファイルを貰います。
    OFII関連の書類は、次回の更新まで保存しておかなければならない大切な書類もあるので、私は、わかりやすいこのファイルに入れて保管する事にしました。

以上で、初日のテストと面談は終了。

半日かかりましたが、フランスに長期滞在するに当たっては避けて通れないステップなので、これからテストと面談を控えている方は、ぜひ頑張ってください。

次回は、CIRの市民研修(formation civique)と、最後の面談の様子をご紹介します。


注釈

(1)CECRL:
ヨーロッパ言語共通参照枠。ヨーロッパ全体で外国語の学習者の習得状況を示す際に用いられるガイドライン。

(2)CECRLのA1レベル(入門レベル):
日常生活の具体的なできごとや自分の意思を伝え、よく使われる日常的表現と基本的な言い回しを、理解し、用いることができる。自分や他人を紹介することができ、どこに住んでいるか、誰と知り合いか、また、持ち物などの個人的情報について、質問をしたり、答えたりできる。相手の協力があり、ゆっくり、はっきりとした会話であれば、簡単なやり取りをすることができる。

(3)ANTS (Agence Nationale des Titres Sécurisés):
フランスの国家安全保障機関。内務省の管轄下にあり、パスポートや運転免許証、車両登録等の手続きや管理を行っています。

(4)在フランス日本国大使館・領事館で作成可能な翻訳証明は、戸籍に基づく身分事項証明、運転免許証などに限られます。大使館で作成していない書類の法定翻訳をフランス当局から要求された場合は、Atenaoにご用命ください。
Atenaoの法廷翻訳は、フランス国裁判所指定の法定翻訳家(TRADUCTEUR ASSERMENTE)が行うため、大使館・領事館の認証印を受ける必要はありません。

ご依頼、お見積もりはこちらから


参考

在フランス日本国大使館:https://www.fr.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html

コメントを残す