商談通訳にも最適なリエゾン通訳とは?仕組み・特徴・養成・メリットを徹底解説
リエゾン通訳は、プロが行う通訳の中でも特によく使われる方法です。
特に 商談通訳 やビジネス会議、国際見本市、医療相談、法律相談、地域や社会の中で行われる日常的なやり取りなど、共通の言語を持たない相手との対面コミュニケーションに広く活用されています。
国際会議でよく使われる同時通訳とは異なり、“対話”に近い形式でやり取りを進めるのが特徴です。通訳者は単に言葉を訳すだけでなく、話し手が本当に伝えたい「意図」や感情まで相手に正確に届ける役割を担います。これは、商談通訳でも重要となる部分です。
リエゾン通訳の特徴
リエゾン通訳は、話し手が短い文をいくつか話した後に一度区切り、その内容を通訳者が相手に伝える、という形で対話が進みます。そのため、同時通訳や逐次通訳とは求められるスキルが大きく異なります。
もう一つの特徴は、メモをほとんど使わないことです。
話す内容が短いので、通訳者は主に記憶に頼って訳します。数字や固有名詞など最低限の情報だけメモする場合もありますが、基本は「しっかり聞いて、正確かつ自然に伝える」ことが中心です。
また、やり取りが対面で行われるため、声のトーンや姿勢、表情といった非言語的な情報も非常に重要です。商談通訳の場面でも、この非言語情報を適切に扱うことで、よりよいコミュニケーションが生まれます。
リエゾン通訳者の養成と必要なスキル
リエゾン通訳者として活躍するには、単にバイリンガルであるだけでは不十分です。
専門の養成プログラムでは、学生が段階的にスキルを身につけられるよう、次のような練習を行います。
- 聞き取りと記憶の練習
学生は短期記憶を鍛えるために、メモを取らずに単語や文、短い会話を繰り返します。 - シャドーイング
少し遅れて同じ言語で話し手の発話を繰り返す練習で、同時に聞き取り能力と発話能力を高めます。 - 言い換えと要約
文を文字通りに繰り返すのではなく、意味を別の言葉で言い換える練習です。これは、慣用表現や文化的な表現を扱ううえで不可欠なスキルです。 - ロールプレイのシミュレーション
指導者が、医療、面談、クライアントとの打ち合わせ、商談通訳などを想定した場面のシナリオを用意し、実際に近い状況で練習します。 - 段階的な難易度の上昇
最初は簡単で明確な内容から練習を始め、徐々に専門的な話題や感情表現が複雑な内容に進みます。
学生はこれらの練習に加え、プロの通訳現場を見学したり、両言語のメディアを聞いたり、小グループで練習しながら、現場で求められる実践スキルを磨きます。
指導者は、学生の演習記録を確認し、強みと改善点を厳しくチェックします。
リエゾン通訳の難しさ
リエゾン通訳は同時通訳ほど専門的な技術を必要としない場合もありますが、それでも独自の難しさがあります。
まず、通訳者は速い会話に対応する必要があります。
あらかじめ準備されたスピーチとは異なり、日常会話は予測が難しく、中断や脱線、不完全な文が含まれることもあります。特に商談通訳では、その場で瞬時に判断し、断片的な発言やあいまいな表現をどのように訳すかを決める能力が求められます。
次に、感情のこもった場面では、通訳の難しさが増します。
医療や法律の現場では、扱う情報がデリケートであったり、衝撃的な内容であったり、重大な交渉が行われたりすることがあります。そのような状況で、内容や話し手の感情を正確に伝えながら中立を保つのは、容易ではありません。
さらに、リエゾン通訳では専門用語に直面する場面も少なくありません。
日常的な会話の中でも、法律、医療、ビジネスなどの専門的な言葉が出てくることがあります。辞書を引く時間はほとんどないため、事前の準備や知識が不可欠です。
また、リエゾン通訳は話し手のすぐそばで行われるため、通訳者の存在が目立ちます。
誤訳や誤解はすぐに気づかれるため、常にプレッシャーの中での対応が求められます。加えて、正確な通訳には高度な対人スキルも必要です。
リエゾン通訳のメリット
こうした難しさがある一方で、リエゾン通訳には明確なメリットがあり、多くの場面で欠かせません。
- 手軽さ
特別な機材は不要で、通訳者と参加者さえいればすぐに行えます。小規模なグループや、設備が限られた場所でも使いやすいです。 - 直接的なやり取り
会議通訳のように通訳者がブースに隠れているわけではなく、通訳者がその場にいるため、直接的で個人的なコミュニケーションが可能です。 - 柔軟性
日常会話からビジネスの打ち合わせまで、さまざまな場面に対応できます。通訳者は状況に合わせて言葉や口調を調整できます。 - コストの低さ
通訳ブースやヘッドセット、大人数のチームが不要なため、同時通訳に比べて費用を抑えられます。
商談・企業訪問・国際見本市など、商談通訳の現場では特にメリットが大きい通訳形式です。
初心者へのリエゾン通訳の指導
通訳の学習を始める学生にとって、リエゾン通訳は最初に学ぶ通訳形式であることがほとんどです。この方法を通して、聞き取り、記憶、言い換え、異文化コミュニケーションの基本を身につけます。
指導者は、次のような練習を組み合わせてトレーニングにあたります。
- 短い会話の録音を使った練習
- クラスメートと行うロールプレイ通訳
- 会話の長さや難易度を少しずつ上げる練習
- 専門分野(医療、ビジネス、政治など)の内容を少しずつ導入
評価は、事前準備なしで会話を通訳する口頭試験が中心です。
正確さ、スムーズさ、内容の理解が重視され、洗練されたスピーチを作ることよりも、話者同士が正確に意思疎通できることが目的です。
まとめ
リエゾン通訳は、同時通訳ほど派手ではないかもしれませんが、日常生活からビジネス、医療、法律、そして 商談通訳の現場まで、多様なシーンで欠かせない存在です。
その強みは、即時性と柔軟性、そして人と人とのつながりを生み出す力にあります。
通訳者にとってリエゾン通訳は、準備や機材に頼れない状況で、短時間のうちに双方向の意味を正確に伝えなければならないという、独特の難しさがあります。
一方、依頼者やその関係者にとっては、言葉の壁が理解や判断、そして信頼関係の構築を妨げないよう支えてくれる、欠かせない存在です。
世界がますますつながる今、リエゾン通訳は、会話を通して人と人を結び続ける、重要なコミュニケーション手段となっています。
商談会議・リエゾン通訳をご検討中ですか?






