プロによるポストエディット: 人工知能と人間の専門知識の融合

プロによるポストエディットとは、ニューラル機械翻訳によって翻訳されたテキストを、プロの翻訳者が見直し、必要に応じて修正するプロセスを指します。

ポストエディットは機械翻訳と同時に誕生し、アルゴリズム機械翻訳(2016年まではSystran、Apertium、Google翻訳)がニューラル機械翻訳へと進化したことで、その精度と実用性は大幅に向上しました。一方で、このような進歩にもかかわらず、機械翻訳のみによる翻訳の品質は、まだまだ完璧とは言い難いレベルです。

ポストエディットのプロセスは、翻訳者が複数のニューラル翻訳エンジンを用いて、原文をあらかじめ翻訳するところからスタートします。その後、機械が作成した翻訳内容を翻訳者が比較し、最適な翻訳を選択した上で、編集および修正を加えます。

プロによるポストエディット作業6つのステップ:

  1. 機械翻訳:オンライン翻訳ソフトウェア、機械翻訳APIまたはローカリゼーションプラットフォームに組み込まれた機械翻訳ツールを用いて、1つまたは複数の”土台となる翻訳”を作成。
  2. 品質評価:プロの翻訳者が、正確さ、一貫性、流暢さ、文脈との関連性などの基準に従って、下書き翻訳の品質を評価。複数の土台翻訳がある場合は、品質を評価した上で、最適な翻訳テキストを選択します。
  3. 修正が必要な箇所の特定:翻訳者が、機械翻訳の誤り、矛盾、誤解、文体の間違いや違和感がある部分を特定します。文法上の誤り、不適切な言葉の選択、用語の誤り、文章全体の意味を理解する上での問題の洗い出しを行う作業です。
  4. 修正:翻訳者がこれに、より正確かつ自然なテキストに仕上がるよう、修正を加えます。具体的には、文章の修正、文章の再構成、不適切な用語の置き換え、用語の調整、不足している情報の追加、不要な部分の削除などを指します。
  5. 一貫性のチェック:翻訳者は、翻訳テキストが全体としてまとまっているか、指定された用語やスタイル基準に沿っているか、また、用語管理ツールを使用して、専門用語が一貫して使用されているかを確認します。
  6. 編集と校正:翻訳者は、編集後の翻訳文全体を注意深くチェックし、翻訳の品質、正確さ、自然な文章であるかを確認します。

ポストエディットのメリット:

  • 翻訳作業の時間短縮:プロのポストエディットにより、翻訳時間は2~3倍短縮されます。翻訳者は、テキストを一から翻訳せず、機械によって自動翻訳されたテキストを修正・改善します。大規模なプロジェクトや、納期が厳しい場合、特に有意義な点と言えるでしょう。
  • 費用対効果:作業の多くが機械によって行われ、翻訳者の能力が必要となる部分は、見直しと修正のみになるため、大幅に経費を削減することができます。
  • ポストエディットは、翻訳者自身にもメリットがあります。言語・文化によって異なる文章のニュアンスが、的確かつ自然に反映されるように調整するという、人間にしかできない重要な役割はそのままに、AIの機能により、効率的に作業を進めることができます。

どのようなケースに向いているか

短めな文章で構成されている、標準的な文書の翻訳に向いています。読者に、内容を的確に理解して貰うことを必要としつつも、何か特定のものに対する評価を促したり、感情的な反応を促すことを意図していない、次のような文章の翻訳に適しています。

  • ソフトウェア
  • データベース
  • 技術文章
  • リファレンスマニュアル(ハードウェアやソフトウェアの機能一覧を解説したマニュアル)
  • 一般的な機器の使用説明書
  • 製品データベース
  • 観光案内(宿泊ガイドなど)
  • 法律や行政の契約書

ポストエディットの限界:

  • 限界ある品質:ポストエディットの品質は、土台となる機械翻訳の精度によって、大きく左右されます。機械翻訳の品質が低ければ、原文の意味を保ちながら翻訳テキスト全体を修正する翻訳者の作業は、複雑かつボリュームも多くなり、時間と労力を要するものとなります。
  • 原文のスタイルが失われる:機械翻訳は、語調や作者特有の文章表現を再現できないため、標準化された文体に仕上がる傾向があります。
  • 正確さの欠如

ポストエディットが向いていないケースとは

  • 機密性の高い文章
  • マーケティング翻訳など、読者への心理的な効果(知名度やイメージの向上、行動の変化、購入意欲など)を促すことを念頭に置いて作成されている文章
  • 誤解や誤訳があった場合、重大な影響をもたらす可能性がある文章(絶対的な正確さが求められる文章)
  • 文化的または文脈的に、ニュアンスや語調の調整が必要となる文章
  • 馴染みのない言語を扱う場合

上記のような文章には、100%人力翻訳、ISO17100翻訳、トランスクリエーション翻訳の方が向いています。

多言語サービスを提供している会社に依頼した方が良い理由は?

  • ニューラル翻訳に対する知識: アテナオはこれまでに、あらゆる分野と関連する専門用語を用いながら、多くの翻訳プロジェクトに取り組んできました。数あるニューラル翻訳エンジンの、それぞれの特徴を熟知した上で、プロジェクト毎の条件や制約(言語の組み合わせ、テーマなど)に最も適したツールを選択、活用します。
  • 強力な翻訳ツールの活用: 高品質なポストエディット翻訳を実現するには、ニューラル翻訳エンジンに関する知識に加えて、ポストエディットツールの知識も欠かせません。アテナオが導入しているコンピュータ翻訳支援(CAT)ツールには、翻訳メモリ、用語管理、翻訳セグメントの再利用といった、ポストエディットに特化した機能があり、作業を迅速に進めることができます。
  • ハイレベルなプロの翻訳家:アテナオは、世界各国の有能な翻訳者のほとんどと提携しているため、最高品質の翻訳を提供するにあたり、それぞれのプロジェクトに最も適した翻訳者を選抜することが可能です。
  • 納期の最適化:お客様の納期に合わせて、プロジェクトをいくつものパートに分割し、複数の翻訳者を手配することができます。
  • 価格的なメリット:翻訳業者を利用するには経費がかかりますが、多言語サービスを提供する企業はポストエディットの市場価格を把握しているため、各段階で必要となるサービスや専門知識を加味すると、一般的なフリーランスの翻訳者に依頼するよりも、最初から多言語サービスに特化した企業にプロジェクトを委託した方が、費用対効果が高くなります。