2000〜2020年 – 雑誌翻訳の移り変わり
この20年で、デジタル化の流れとメディア消費の習慣の変化は、雑誌業界を大きく変貌させました。こうした変化に対応し、読者との新たな向き合い方を見出した雑誌は成功した一方で、刻々と変化するメディア環境の中で、収益性とコンテンツの魅力の維持に苦闘している雑誌もあります。
このような背景から、ジャーナリズムや雑誌の翻訳の在り方も、大きく変化しつつあります。
本日は、アテナオが過去20年の間に翻訳した大衆誌、専門誌、フリーペーパー、企業誌といった出版物の一部をご紹介します。
翻訳実績の一例
- The Watches Magazine(ザ・ウォッチ・マガジン)
- Kachen(カーヘン)
- TRAJECTOIRE(トラジェクトワール)
- Graffiti Art(グラフィティーアート)
- Les Cahiers du Tourisme(ル・カイエ・ドゥ・トゥリスム)
- LUX le magazine du Touquet-Paris-Plage(ル・トゥーケ・パリ・プラージュの雑誌、LUX)
- La Recherche(ラ・ルシェルシュ)
- Côte Lugano(コート・ルガーノ)
- Eurospapoolnews(ユーロ スパプール ニュース)
- L’écho des ADF(ADFエコー)
- McommeMaison(エム コム メゾン)
The Watches Magazine
(ザ・ウォッチ・マガジン)
多言語サービスプロバイダーであるアテナオにとって、雑誌翻訳の原点とも言える高級時計の専門誌The Watches Magazineについては、別途、ブログで紹介しています。
Kachen
(カーヘン)
Kachenは、美味しい小料理を紹介しているルクセンブルグ発の雑誌です。ルクセンブルク料理界の著名人物に、季刊誌『Kachen』の翻訳を依頼された際、私たちはこの特別なコラボレーションに相応しい、下記のオリジナルレシピを作成しました。
原材料:
- 1誌あたり約10万語のドイツ語
- Adobe Indesignによるレイアウト1点
- 食と福祉を専門とするネイティブの英語翻訳者4名
- 専任のプロジェクトマネージャー(弊社で最もグルメなスタッフ)1名
- 英文校正者/英語の言語学者(ネイティブスピーカー)1名、
- グラフィックデザイナー1名
調理手順
- 雑誌のテキストまたは雑誌そのものを、PDF、INDD、IDMLのいずれかの形式でアテナオへ送付
- 翻訳を希望する言語を指定
- 本件の担当者であるプロジェクトマネージャーと挨拶を交わしましょう
- 提案された料金、プロセス、納期についての確認
- プロジェクトの下ごしらえは整いました!
プロジェクトマネージャーは、選りすぐりの翻訳者に原稿を送り、翻訳と校正を行います。その後、アテナオのDTPスタジオにて、Adobe Indesignを使った多言語グラフィックが制作されます。
TRAJECTOIRE
(トラジェクトワール)
1992年に創刊されたTRAJECTOIREは、一時はスイスのフランス語圏で最大の有料購読者数を誇り、約30年にわたってこの地域を代表する高級誌の1つでした。富裕層向けのクオリティマガジンである180ページの誌面は特に、ファッション、デザイン、時計、自動車、高級ブランド、そしてニュースや政治に関連したオピニオンリーダーに人気がありました。この雑誌は、残念ながらコロナ渦の影響に耐えきれず、現在オンライン上ではFacebookのみで紹介されています。
TRAJECTOIREは、1誌あたり20,000字前後で構成されており、フランス語と英語の翻訳を弊社に委託していました。独自の視点を活かした、世界中の著名な専門ライターによるレポートや対談が毎号掲載されていました。
Graffiti Art
(グラフィティ・アート)
フランス発のコンテンポラリーアーバンアート専門誌、Graffiti Artは、新進気鋭のフランスおよび世界の才能溢れるアートを紹介しています。毎号の様に、ストリートアート、ペインティング、イラストレーション、写真、デザイン、グラフィティなど、あらゆるジャンルの類稀なる作品が掲載されている本誌は、現代の都市芸術を映し出す出版物と言えるでしょう。
Graffiti Artは現在、フランス語と英語に翻訳され、世界15カ国で販売されています。2010年12月に発行された第10号は、初のバイリンガル号となりました。このとき、ギャラリー・イティネランスのサマンサ・ロンギ氏が編集長に就任しました。
2013年にGraffiti Artは出版元を変え、サマンサ・ロンギ氏は多言語サービスプロバイダーであるアテナオに、本誌のフランス語-英語、英語-フランス語の翻訳を依頼しました。Graffiti Artはこうして、フランスで最大の読者を持つ、現代アートシーンにとって大変重要な媒体となりました。
2017年、サマンサ・ロンギ氏はベンチャー企業を離れ、自ら設立に関わったOpenspace galleryのプロジェクトに専念することを決意。雑誌は季刊から隔月刊となり、アテナオとのコラボレーションは3年の間、十数号にわたる多言語サービスを提供したのち、幕を閉じました。
Les Cahiers du Tourisme
(レ・カイエ・デュ・ツーリズム)
主要メディアが幅広い読者層をターゲットとする一方で、業界紙は、特定の活動に焦点を当てています。出版元のLes éditions de Bionnay社は、緑地や公共スペースの整備、スポーツグラウンド、ゴルフコース、公共プール、庭園、プライベートプールの設計、開発、メンテナンスを行う企業や自治体をターゲットとた雑誌、Les Cahiers du Tourisme(現在の誌名はLes Cahiers du Tourisme et du Fleurissement)を展開しています。
2012年から2015年にかけて、多言語サービスプロバイダーであるアテナオは、Cahiers du Tourismeより、山岳特集号のフランス語-英語の観光翻訳、フランス語-ロシア語翻訳、Adobe Indesignによるグラフィックデザイン(特にキリル文字)を委託されました。本誌は、世界でも有数の美しいスキー場、トレンド、登山スポットの紹介、ファッション、さらには観光情報、イノベーション関連のニュース等を盛り込んだ、業界関係者をターゲットとした25,000字前後の雑誌です。
LUX le magazine du Touquet-Paris-Plage
(ル・トゥーケ・パリ・プラージュの雑誌、LUX)
フランス北部、ブローニュ・シュル・メールの南、コート・ドゥペールに位置する街、ル・トゥーケ・パリ・プラージュは、パ・ド・カレー地方で最も人気のある観光地で、アングロ・ノルマン様式の見事な建築遺産、広大な森林、歴史的建造物として保護されている21の建造物などを誇る、フランスで最も有名な海辺のリゾート地として知られています。
旅行会社、ル・トゥケ・パリ・プラージュ・ツーリズム社は、出張者、団体観光客、一般の観光客といった幅広い層の顧客を対象とした国際コミュニケーション・キャンペーンの一環として、「フランスの最もエレガントなビーチ」を紹介する写真や記事、観光のヒント、アイデア、アドバイスをまとめた独自の雑誌を発行しました。
そして本社は、イギリス、ベルギー、オランダ、ドイツからの観光客を中心とした外国の読者層にアピールすべく、翻訳事業をアテナオに任命。合計52ページの雑誌の英語観光翻訳と、フランス語・オランダ語の翻訳を行いました。
その後LUXは、魅力的な内容にもかかわらず、2017年、第6号を最後に閉刊することになります。
La Recherche
(ラ・ルシェルシュ)
2007年から2010年まで、Société d’Editions Scientifiques(2020年末にSES SOPHIA PUBLICATIONSと社名変更。現在は閉業)はアテナオに、付録冊子の科学翻訳を委託しています。
この付録冊子とは、本誌の特集内容について詳しく解説する補助的な冊子で、そのテーマは、多岐に渡る科学ニュース(天体、物質、地球、生命、考古学、サピエンス、健康、テクノロジー、数学)でした。
この翻訳プロジェクトの趣旨は、フランスの主要な産業グループと共同で編集された冊子を、フランス語から英語に翻訳するものでした
- 2007 – ALSACE PEPITE DE L’INNOVATION:アルザス地方がスポンサーとなった24ページの小冊子
- 2008 – OBJECTIF TERRE:ヴェオリア・エンバイロメント社主催の、地球の未来をテーマとした96ページの小冊子
- 2009 – THE TRAINS OF THE FUTURE:100ページにわたる列車の特集号
- 2010年 – LE PETROLE EN 2030 – TOTAL、ADEME、IFPが後援する、化石燃料の未来に関する96ページの小冊子
科学翻訳は、たとえそれが一般読者向けの雑誌記事であっても、専門的なテキストと同じくらい複雑な作業になることがあります。これは、翻訳者がその分野を熟知し、同時に著者が提案した読みやすさのレベルを担保しなければならないためです。そのためには、次のことが必要です:
- 対象となる読者層を知り、その科学的知識のレベルを認識する
- 単純な言い回しや表現でも、忠実に翻訳する
- 複雑な専門用語や、難解な略語等は避ける
- 科学的な文章をより魅力的にするため、物語的な要素を取り入れる
COTE Magazine
(コート マガジン)
ライフスタイル誌のCOTE Magazineは、洗練されたエレガンスの世界をテーマとしています。国籍を問わず、エレガンスとラグジュアリーに関心を持つ顧客を対象としたこの雑誌は、読者を、南仏を中心とした豪華かつハイセンスな世界へと誘います。
2013年から2019年まで、通訳・翻訳会社アテナオが翻訳を担当しました。
Eurospapoolnews
(ユーロスパプールニュース)
雑誌『Piscines & Spas』とニュースサイト『Eurospapoolnews』を発行するインターナショナルメディアコミュニケーション社は、2013年より、フランス語からロシア語、イタリア語、英語への翻訳を、通訳・翻訳会社アテナオに委託しています。
インターナショナル・メディア・コミュニケーション社は、ヨーロッパを代表するプール・スパの業界誌「Piscines & Spas」と、プール関連のニュースサイト「Eurospapoolnews」を通じて、同分野の情報を独占的に配信しています。本誌の翻訳は、プール関連の専門サイトpiscineprivee.com、インテリア雑誌McommeMaison、プール専門誌piscinexとともに、2010年代初頭のプール・スパ分野の翻訳におけるアテナオの地位を、更に強固なものにしました。
L’écho des ADF
(ADFエコー)
アテナオは、エンジニアリング企業、ADFのビジネス誌「l’écho des ADF」のフランス語・フラマン語翻訳を行いました。この雑誌は、ADFの企業活動の中でも航空分野に特化したもので、ADFグループが行った主な活動、ニュース、航空業界のニュースなどを紹介しています。
M comme Maison
(エム コム メゾン)
無料のインテリア・デザイン雑誌「M comme Maison」のように、オンライン記事、動画配信等といったインターネットのインタラクティブな機能を通じて、読者を獲得している出版物もあります。
2007年4月から2009年末まで、本誌は紙媒体で発行されたのち、郵送で配布されていました。2008年の金融危機の影響を受け、2012年から2015年まではデジタル版のみが復刻、再発行されました。フランス語と英語の翻訳をアテナオが担当したこの雑誌は、読者と出版元がインタラクティブにやりとりできるオンラインフォーマットにより、ユニークな読書体験を提供しました。
200以上のリンク(動画、チュートリアル、スライドショー、ハイパーリンク)が組み込まれたM comme Maisonは、ウェブを通じた対話機能、そして従来の出版物としての読みやすさを融合させた、独自の読み物となりました。スマートフォンやタブレットでページを閲覧する読者は、写真や広告をクリックすると、動画やスライドショー、関連するウェブサイト、商品の注文リンク、装飾の専門家のカタログに直接アクセスすることができます。一方で、その豊かなコンテンツにもかかわらず、『M comme Maison』誌のビジネスモデルは、はるかに安価なブログとの競争に勝つことができず。2014年10月に最終号が発行されました。
雑誌翻訳の未来について
情報の流通がグローバル化した現在、雑誌の翻訳は、字幕、吹き替え、音声吹き替えを中心とした多言語オーディオビジュアルコンテンツに重点を置く傾向が強まっています。紙媒体の翻訳は今後、発行部数の減少に伴って衰退していく可能性がありますが、映像コンテンツの飛躍的な成長とともに、需要の増加も見込まれている分野もあります。
ジャンルに関わらず、読み物の翻訳には、言語能力はもちろんのことですが、それと同じくらい、原文のニュアンスや微妙な言葉の綾を適切に伝える、文才が求められます。各国の読者に向けて、一語一句を大切に、魅力的な文章を綴ると同時に、正確に情報を伝えることが求められる読み物の翻訳は、芸術とも言える仕事なのです。
出版物の多言語化をお考えの場合は、ぜひアテナオまでご連絡ください。